L2SWとL3SWの違いと仕組みを初心者向けにやさしく詳しく解説

「L2スイッチとL3スイッチって、何が違うの?」

「MACアドレスとIPアドレスの役割が分からない」

「VLANを分けると、どうして通信出来無くなるの?」

ネットワークを学び始めると、この様な疑問が出てきます。

L2スイッチ(L2SW)は、主にMACアドレスを使って同じL2ネットワーク内の通信を転送する機器です。一方、L3スイッチ(L3SW)は、IPアドレスを使って異なるネットワーク間の通信も中継出来ます。

この記事では、L2SWとL3SWの違いから、MACアドレステーブル、ARP、VLAN、ルーティングの仕組みまで、イメージ出来る様に具体例を交えて解説します。

 




図解|L2SWとL3SWの役割を30秒で比較
L2スイッチ
MACアドレスで同じVLAN内の転送
L3スイッチ
IPアドレスで異なるネットワーク間を転送

L3SWも同じVLAN内ではL2スイッチングを行います。

L2スイッチとL3スイッチの違いとは?

L2SWとL3SWの違いを比較表で確認

L2スイッチとL3スイッチは、どちらもパソコンやサーバーをネットワークにつなぐために使われる機器です。

見た目が似ていても、通信を判断する時に使用する情報や対応出来る範囲が異なります。

L2スイッチは、主に同じL2ネットワーク内の通信を中継します。

例えば、学校のパソコン教室にある複数のPCをL2スイッチに接続すると、スイッチは宛先MACアドレスを見て適切なポートへデータを転送します。

一方、L3スイッチはL2スイッチとしての機能に加え、IPアドレスを使ったルーティングに対応します。

営業部で「192.168.10.0/24」、経理部で「192.168.20.0/24」を使っている場合、L3スイッチはこれらの異なるIPネットワーク間の通信を中継出来ます。

L2SWとL3SWの主な違い
比較項目 L2スイッチ L3スイッチ
主な処理 L2フレーム転送 L2フレーム転送とIPルーティング
転送判断の主な情報 MACアドレス MACアドレス・IPアドレス
MACアドレステーブル 使う 使う
ルーティングテーブル 通常は転送に使わない 使う
VLAN対応 対応製品で可能 対応製品で可能
VLAN間ルーティング 基本的に不可 対応
主な用途 端末の接続 異なるネットワークの集約・接続

 

まずは「L2は同じL2ネットワーク内の転送、L3は異なるIPネットワーク間のルーティングも可能」と覚えましょう。

ただし、実際の機能は製品や設定によって異なります。

また、L3スイッチでも同じVLAN内の通信では通常のL2転送が行われます。

OSI参照モデルのL2とL3を理解する

図解|OSI参照モデルのL2とL3
L4 トランスポート層(TCP・UDP)
L3 ネットワーク層:IPアドレスとルーティング
L2 データリンク層:MACアドレスとスイッチング
L1 物理層:電気・光信号

OSI参照モデル7層のうち通信の違いに関係が深い部分を抜粋。

「L2」「L3」のLは「Layer(層)」の頭文字です。

ネットワークの働きを7つの階層に整理した「OSI参照モデル」の第2層(データリンク層)と第3層(ネットワーク層)に由来します。

OSI参照モデルの7階層
層 名称 主な内容
L7 アプリケーション層 アプリケーションの通信
L6 プレゼンテーション層 データ形式の扱い
L5 セッション層 通信のやり取りの管理
L4 トランスポート層 通信の端点・信頼性など
L3 ネットワーク層 IPアドレスと経路選択
L2 データリンク層 同じL2ネットワーク内のフレーム転送
L1 物理層 信号やケーブル

 

データリンク層で扱うEthernetフレームには送信元MACアドレスと宛先MACアドレスが含まれます。

L2スイッチは主にこの情報を使って、どのポートにフレームを送るかを決めます。

ネットワーク層ではIPアドレスが重要です。

例えば異なるフロアや拠点のネットワークへデータを送る時、L3スイッチやルーターは宛先IPアドレスとルーティングテーブルを使って転送先を決めます。

身近な例でいえば、MACアドレスは「次に届ける相手を同じエリア内で指定する情報」、IPアドレスは「目的のネットワークや端末を示す情報」です。

実際の通信では二つの仕組みが連携します。

L2とL3は対立するものではなく、役割分担して働く階層
なのです。

L2スイッチ(L2SW)の仕組み

MACアドレスを使ってデータを転送する仕組み

図解|L2SWは宛先MACを見てポートを選ぶ
PC-A
ポート1 / 送信元
L2SW
MACテーブルを参照
PC-B
ポート2 / 宛先
PC-C
ポート3 / 宛先ではない
学習済みの場合
PC-Cへは転送しない

宛先MACアドレス未学習なら、同じVLANのほかの転送可能なポートにフラッディングします。

PC-A、PC-B、PC-Cが1台のL2スイッチに接続されているとします。

PC-AがPC-Bへデータを送る時、スイッチはEthernetフレームの宛先MACアドレスを確認します。

  PC-A                 L2スイッチ                 PC-B
  ポート1 ─────────→ [ MACを確認 ] ─────────→ ポート2
                             │
                             └────────────── PC-C(ポート3)
           ※宛先が学習済みなら、PC-Cには転送しない
図1:L2スイッチがMACアドレスを使ってフレームを転送する例

宛先のMACアドレスがポート2の先にあると分かれば、スイッチはそのポートへ転送します。

PC-Cに同じフレームを送る必要はありません。

この様に不要な転送を抑えられるのが、スイッチの大きな特徴です。

昔のリピーターハブは、基本的に受信した信号を他のポートへ繰り返し送っていました。

対してL2スイッチは、MACアドレスを調べて転送先を選択します。

ただし、宛先が不明な場合やブロードキャストの場合は、同じVLAN内の複数ポートへ送る
事があります。

注意したいのは、L2スイッチは通常、IPパケットの宛先IPアドレスから転送ポートを決める訳では無いという点です。

IPアドレスを使って通信している時も、同じEthernetネットワーク内のフレーム転送ではMACアドレスが重要になります。

MACアドレステーブルの学習と転送の流れ

図解|MACアドレステーブルの学習から転送まで

1

送信元MACを学習

PC-Aから受信したフレームを見て「AA:…:01 → ポート1」を登録

2

宛先MACを検索

PC-Bの「BB:…:02」がテーブルにあるかを確認

3

既知なら該当ポートへ

登録されていればPC-Bのポート2へ転送

4

未知ならフラッディング

宛先が未学習ならVLAN内のほかの転送可能なポートへ送信

「MACアドレステーブル」は、MACアドレスがどのスイッチポートの先にあるかを記録する一覧表
です。

スイッチはフレームを受信した時、その送信元MACアドレスを確認して学習します。

MACアドレステーブルの例
VLAN MACアドレス(例) ポート
10 AA:AA:AA:AA:AA:01 1
10 BB:BB:BB:BB:BB:02 2
10 CC:CC:CC:CC:CC:03 3

例えばPC-Aからポート1にフレームが届けば、スイッチは送信元MACアドレス「AA:AA:AA:AA:AA:01」がポート1の先にある事を覚えます。

PC-Bが返信すれば、返信フレームの送信元MACアドレスから、PC-Bがポート2の先にある事を学習します。

つまり、学習する時に確認するのは基本的に送信元MACアドレス
であり、転送先を決める時に確認するのは宛先MACアドレス
です。

この区別を覚えておきましょう。

宛先がまだテーブルに登録されていない場合、スイッチは同じVLANに属する転送可能なポートへフレームを送ります。

これを「未知のユニキャストのフラッディング」といいます。

その後、相手から返信が届けば、次回から学習したポートへ転送出来ます。

また、動的に学習したMACアドレスの情報は通常、一定時間利用されないと削除されます。

この機能を「エージング」と呼びます。

端末の接続場所が変わった場合でも、古い情報を残し続けないための仕組みです。

なお、詳細な学習・エージング動作や設定コマンドはメーカーと機種によって異なります。

MACアドレスとIPアドレスの違い

MACアドレスとは?役割と特徴

MACアドレスは、主にネットワークインターフェースを識別するための番号です。

一般的なEthernetのMACアドレスは48ビットで、「00:1A:2B:3C:4D:5E」のように16進数で書きます。

製造時に割り当てられるMACアドレスも多い一方、ソフトウェアから変更出来る場合もあります。

スマートフォンやパソコンでは、Wi-Fiのプライバシー保護のため、接続先ごとにランダム化したMACアドレスが使われる事もあります。

そのため「MACアドレスは絶対に変わらない」という理解は正確ではありません。

PCに有線LANとWi-Fiの両方が付いている場合、それぞれが別のMACアドレスを持つのが一般的です。

「1台のPCに必ず1つ」という訳でもありません。

MACアドレスは、Ethernetフレームを同じL2ネットワーク内で届ける時に役立ちます。

ネットワークの境界にあるルーターを通過すると、通常、次のリンクに合わせてEthernetフレームのMACアドレスは変わります。

最終目的地まで同じ宛先MACアドレスを付け続ける訳ではありません。

このため、MACアドレスは「今いるネットワーク区間で、フレームをどこへ届けるか」という役割を中心に理解すると整理し易いでしょう。

IPアドレスとは?ARPとの関係も解説

図解|ARP:IPv4アドレスからMACアドレスを調べる
PC-A
192.168.10.10
VLAN10
ARP要求:10.20のMACは?
PC-B
192.168.10.20
PC-A
MACをARP表へ記録
ARP応答
BB:BB:…:02
PC-B
自分のMACを知らせる

ARPはIPv4の仕組みです。異なるIPネットワーク宛てなら、通常はゲートウェイのMACを調べます。

IPアドレスはIPネットワーク上で通信先を識別するための情報です。

IPv4なら「192.168.1.10」、IPv6なら「2001:db8::10」といった形式があります。

IPアドレスは、ネットワークをまたぐ通信で宛先を判断するために利用されます。

例えばPC-Aが「192.168.1.10/24」、PC-Bが「192.168.1.20/24」なら、通常は同じIPネットワークに属します。

PC-AからPC-BへEthernetで通信する際には、PC-BのMACアドレスが必要です。

この時IPv4で利用するのがARP(Address Resolution Protocol)
です。

PC-AがPC-BのMACアドレスを知らなければ、同じリンク上でARPリクエストを送ります。

PC-Bが返信すると、PC-AはIPアドレスとMACアドレスの対応を知る事が出来ます。

一方、PC-Aが「192.168.2.20」の様な異なるネットワークの端末へ通信する時は、通常、デフォルトゲートウェイへパケットを送ります。

この場合にARPで調べるのは、最終的な宛先PCのMACアドレスではなく、同じリンク上にあるゲートウェイのMACアドレスです。

IPアドレスはIPパケットの宛先を示し、MACアドレスはEthernet区間で次にフレームを届ける相手を示す
、と考えると分かり易いでしょう。

なお、IPv6ではIPv4のARPではなく、Neighbor Discoveryなどの仕組みが使われます。

VLANとは?ネットワークを分割する仕組み

VLANの基本とメリット

図解|1台の物理スイッチを3つのVLANへ論理分割
VLAN10
営業部 / 192.168.10.0/24
VLAN20
経理部 / 192.168.20.0/24
VLAN30
総務部 / 192.168.30.0/24

それぞれ別のブロードキャストドメイン。L2転送だけでは異なるVLANへ届きません。

VLANは「Virtual LAN」の略で、1台または複数台のスイッチを使い、L2ネットワークを論理的に分割する技術です。

物理的には同じスイッチにつながっていても、別のVLANに所属させれば、基本的に異なるL2ネットワークとして扱われます。

                VLAN対応L2スイッチ
                 ┌────┼────┐
                 │    │    │
               VLAN10 VLAN20 VLAN30
                営業部  経理部  総務部
           (ブロードキャストの範囲を分離)
図2:1台のスイッチで3つのVLANを作る例

例えば営業部のPCをVLAN10、経理部をVLAN20、総務部をVLAN30に割り当てます。

営業部のPCがブロードキャストを送った場合、その通信は通常、VLAN10の中に留まります。

経理部や総務部のVLANにそのまま広がる訳ではありません。

VLANを利用すると、部署や利用目的ごとに通信を整理出来ます。

例えば社員用、来客用、IP電話用、監視カメラ用などに分ければ、運用し易いネットワークを作れます。

一般的には、VLANごとに異なるIPサブネットを割り当てます。

ただし、VLANはそれ自体で完全なセキュリティ対策になる訳ではありません。

L3スイッチでVLAN間ルーティングを設定すれば異なるVLAN間で通信出来るため、アクセスを制限するにはACLやファイアウォールなども必要です。

また、VLANを作っただけでIPアドレスが自動的に割り当てられる訳ではありません。

アクセスポートとトランクポートの違い

図解|アクセスポートとトランクポート
PC-A
VLAN10の端末
スイッチA
アクセス:VLAN10
スイッチB
トランク:VLAN10・20
アクセスポート
通常は端末へ接続。原則1 VLAN
トランクポート
複数VLANを802.1Qタグで運ぶ

トランクをつないでもVLAN間ルーティングが自動で有効になるわけではありません。ネイティブVLANなどの例外があります。

VLAN対応スイッチのポートには、一般的に「アクセスポート」と「トランクポート」という使い分けがあります。

アクセスポートは、通常1つのVLANに所属する端末を接続するためのポートです。

例えば営業部のPCをつなぐポートをVLAN10に設定すると、そのPCの通信は基本的にVLAN10として扱われます。

端末側がVLANタグを意識しなくても利用出来る構成が一般的です。

トランクポートは、複数のVLANの通信を1本のリンクで運ぶために利用します。

例えば1階と2階のスイッチを接続し、どちらのフロアでもVLAN10とVLAN20を利用する時に便利です。

一般的な方式であるIEEE 802.1Qでは、EthernetフレームにVLANを識別するタグを付けます。

受信側のスイッチはタグを見て、フレームがどのVLANに属するかを判断します。

ただしネイティブVLANの様に、トランク上でタグ無しフレームを扱う場合もあります。

アクセスポートは主に1つのVLANの端末接続、トランクポートは複数VLANの運搬
と覚えましょう。

トランクはVLAN間ルーティングを実現する機能ではありません。

別VLANへの通信には、L3スイッチやルーターのルーティング機能が必要です。




L3スイッチ(L3SW)の仕組み

IPアドレスを使ったルーティングの仕組み

図解|ルーティングテーブルを使ったIP転送
PC-A
192.168.10.10
L3SW
宛先IPを調べる / 経路表でVLAN20を選ぶ
PC-B
192.168.20.20
L2の情報
次の区間の送信元・宛先MACを使用
L3の情報
原則、宛先IPはそのまま / TTLは減少

NATなど別の機能が働かない通常のIPv4ルーティングを想定しています。

L3スイッチは、L2転送に加えてIPパケットを別のIPネットワークへ転送する「ルーティング」が出来ます。

ルーティングでは、宛先IPアドレスとルーティングテーブルを確認し、転送先を決めます。

例えばVLAN10のネットワークが「192.168.10.0/24」、VLAN20が「192.168.20.0/24」とします。

L3スイッチのそれぞれのインターフェースに「192.168.10.1」「192.168.20.1」を設定すると、両方のネットワークがL3スイッチに直接接続された状態になります。

ルーティングテーブルの簡略例
宛先ネットワーク 転送先
192.168.10.0/24 VLAN10側へ直接転送
192.168.20.0/24 VLAN20側へ直接転送
0.0.0.0/0 上位ルーターへ(設定されている場合)

宛先が「192.168.20.20」なら、L3スイッチはVLAN20側へ送ると判断します。

そして必要に応じてARPで次の宛先MACアドレスを調べ、Ethernetフレームを新しく作って転送します。

通常のIPv4ルーティングでは、送信元・宛先IPアドレスは変えず、次の区間に合わせてL2フレームのMACアドレスを付け替えます。

また、IPヘッダーのTTLが減ります。

NATなど別の処理を行う場合は、この説明とは異なる事があります。

L3スイッチには専用ハードウェアで高速転送する製品が多いものの、ルーターにも高速な製品があります。

「L3SWなら必ずルーターより速い」とは考えず、用途と仕様を確認する事が大切です。

VLAN間ルーティングとデフォルトゲートウェイ

図解|SVIを使って2つのVLANをつなぐ
VLAN10

PC-A:192.168.10.10
GW:192.168.10.1
L3SW / SVI

VLAN10:192.168.10.1
VLAN20:192.168.20.1
VLAN20

PC-B:192.168.20.20
GW:192.168.20.1

SVIはVLANごとのL3インターフェース。機種によってはIPルーティング有効化などが必要です。

VLAN間ルーティングとは、異なるVLANの間をL3の機能で接続する事です。

例えばVLAN10とVLAN20にそれぞれ異なるIPネットワークを割り当てた時、L2転送だけでは両者を接続出来ません。

L3スイッチでは「SVI(Switch Virtual Interface)」というVLANに対応する論理インターフェースを使う構成が一般的です。

VLAN10のSVIに「192.168.10.1/24」、VLAN20のSVIに「192.168.20.1/24」を設定すると、これらを各VLANのデフォルトゲートウェイに出来ます。

  PC-A / VLAN10                      PC-B / VLAN20
  192.168.10.10                      192.168.20.20
  GW:192.168.10.1                    GW:192.168.20.1
          │                                  │
          └──────── L3スイッチ ──────────────┘
                 SVI10      SVI20
            192.168.10.1  192.168.20.1
図3:L3スイッチのSVIを使ったVLAN間ルーティング

PC-AがPC-Bへ通信する時、PC-Aは宛先が別ネットワークにあると判断し、自分のデフォルトゲートウェイへフレームを送ります。

L3スイッチはIPパケットの宛先を確認してVLAN20側へ転送します。

実際には、VLANの作成、ポートへの割り当て、SVIの動作状態、IPルーティング機能の有効化、ACLなどが正しく設定されている必要があります。

どの操作が必要かは機種によって異なるため、メーカーの設定ガイドも確認しましょう。

L2SWとL3SWの通信を具体例で比較

同じVLAN内で通信する場合

図解|同一VLANの通信を5段階で追う

1

宛先IPを確認

192.168.10.20は同じ192.168.10.0/24に所属

2

ARPでPC-BのMACを確認

未学習ならARP要求・応答で解決

3

PC-Aがフレームを送信

宛先MACはPC-BのMAC

4

L2SWが転送

MACアドレステーブルに基づきポート2へ

5

PC-Bが受信

L3ルーティングを経由せず到達

同じVLAN10に、PC-A「192.168.10.10/24」とPC-B「192.168.10.20/24」があるとします。

PC-AがPC-Bにデータを送りたい場合、PC-Aはまず宛先が同じIPネットワークにあると判断します。

PC-AのARPテーブルにPC-BのMACアドレスが無ければ、ARPリクエストをブロードキャストします。

PC-BがARPリプライで自分のMACアドレスを知らせると、PC-Aはその情報を使ってEthernetフレームを作ります。

フレームを受け取ったL2スイッチは、送信元MACアドレスを学習します。

そして宛先MACアドレスがテーブルにあれば、対応するポートへ転送します。

宛先が未学習なら、同じVLAN内でフラッディングする場合があります。

ここで重要なのは、PC-AとPC-Bは同じIPネットワークなので、通常はL3ルーティングを必要としない
ことです。

途中のスイッチがL3スイッチだったとしても、同じVLAN内の通信は通常L2転送で処理されます。

同一VLAN内では、ARPで相手のMACアドレスを知り、MACアドレステーブルでそのポートを探してフレームを届ける、という一連の動作が基本になります。

異なるVLAN間で通信する場合

図解|VLAN間通信:IPは変えず、区間ごとにMACが変わる

区間1|PC-A → L3SW(VLAN10)

送信元IP:192.168.10.10 → 宛先IP:192.168.20.20
宛先MAC:ゲートウェイ(VLAN10側)のMAC

↓ L3SWでルーティング・L2フレーム再作成 ↓

区間2|L3SW → PC-B(VLAN20)

送信元IP:192.168.10.10 → 宛先IP:192.168.20.20
宛先MAC:PC-BのMAC

通常のIPv4ルーティングの例。IPヘッダーのTTLなど一部の情報は更新されます。

次にPC-AがVLAN10「192.168.10.10/24」、PC-BがVLAN20「192.168.20.20/24」にいる場合を考えます。

PC-Aのデフォルトゲートウェイを「192.168.10.1」、PC-Bのデフォルトゲートウェイを「192.168.20.1」とします。

  1. PC-Aは宛先IPアドレスを見て、自分とは別のIPネットワークにあると判断します。
  2. PC-AはARPなどでデフォルトゲートウェイのMACアドレスを調べ、そのMACアドレス宛てにEthernetフレームを送ります。
  3. 途中のL2スイッチはMACアドレステーブルを使って、L3スイッチ側へフレームを届けます。
  4. L3スイッチはIPパケットの宛先「192.168.20.20」を確認し、ルーティングテーブルからVLAN20側へ転送すると判断します。
  5. L3スイッチは必要に応じてPC-BのMACアドレスをARPで調べ、VLAN20側へ新しいEthernetフレームを送ります。
  6. PC-Bが受信し、返信時も必要に応じてゲートウェイを経由します。

ポイントは、PC-AからL3スイッチへ送るフレームの宛先MACアドレスは「ゲートウェイのMACアドレス」であり、IPパケットの宛先は最初から「PC-BのIPアドレス」である事です。

L3スイッチがVLAN20側へ転送すると、フレームのMACアドレスはそのリンクに合わせて付け替えられます。

同じVLANではMACアドレスによるL2転送が中心、異なるVLANではIPによるL3ルーティングが必要
という違いがここに表れます。

L2SW・L3SW・ルーターの違いと選び方

L3スイッチとルーターは何が違う?

L3スイッチとルーターは、どちらも異なるIPネットワークの間でパケットを転送出来ます。

両者の違いは「IPアドレスを扱えるかどうか」ではなく、一般的な用途や搭載機能、インターフェース構成などにあります。

L3スイッチは多数のLANポートとVLANを扱い、社内の複数ネットワークを集約する用途で良く使われます。

例えば営業部、経理部、開発部をそれぞれ異なるVLANに分け、それらの間の通信を制御する構成に向いています。

ルーターはLAN同士の接続だけでなく、WAN回線やインターネットへの接続でも良く使われます。

家庭用ルーターにはNAT、DHCPサーバー、ファイアウォール、Wi-Fiなどが一体化している製品もあります。

ただし、どの機能が搭載されているかは製品によります。

3つの機器の使い分け
項目 L2SW L3SW ルーター
L2フレーム転送 得意 得意 機種・構成による
IPルーティング 基本的に不可 可能 可能
VLAN間通信 単独では不可 得意 対応製品で可能
インターネット接続 別のL3機器が必要 構成・機種による よく使われる
NAT 通常なし 機種による 対応製品が多い

 

「L3スイッチなら必ずルーターより高速」とは限りません。

専用ハードウェアを搭載した高性能ルーターも存在します。

選ぶ時は、必要なVLAN数、ポート数、転送性能、WAN機能、VPNやNATの要否などを確認しましょう。

家庭・オフィス・企業での使い分け

図解|会社のネットワークでよくある配置
インターネット
外部ネットワーク
ルーター / FW
WAN接続・アクセス制御
L3SW
社内のVLAN間ルーティング
営業部 L2SW
PC・プリンター
経理部 L2SW
PC・プリンター
開発部 L2SW
PC・サーバー

下段のL2SW群は上段のL3SWへ接続する構成例です。

 

家庭では、Wi-Fiルーターがインターネットへの接続を担当し、有線LANポートが足りない場合にL2スイッチを追加する構成が一般的です。

全ての端末を同じネットワークに置くなら、L3スイッチは通常必要ありません。

小規模オフィスでは、L2スイッチとルーターの組み合わせで十分な場合があります。

ただし、社員用と来客用のネットワークを分ける、IP電話だけ別のVLANを使う、といった場合はVLAN対応のスイッチが便利です。

VLAN間通信が必要なら、対応するルーターやL3スイッチで中継します。

中規模以上の企業では、端末接続用のL2スイッチを各部署に配置し、集約部分にL3スイッチを置く構成が選ばれる事があります。

インターネット側にはルーターやファイアウォールを配置するなど、役割を分けて利用出来ます。

インターネット
      │
  ルーター / FW
      │
   L3スイッチ(VLAN間ルーティング)
    ├────────┬────────┐
 L2スイッチ L2スイッチ L2スイッチ
    │          │          │
 営業部PC     経理部PC     開発部PC
図4:L2SW・L3SW・ルーターを使い分ける企業LANの構成例

機器選定で重要なのは、「どの端末を同じネットワークに置くか」「どのネットワーク同士を接続するか」「通信をどこで制限するか」を先に決める事です。

必要な機能を明確にすれば、過剰な機器を買わずに済みます。

初心者が間違えやすいポイントとトラブル対策

MACアドレステーブル・ARP・経路表の違い

図解|3つのテーブルは何を解決する?
MACアドレステーブル
MAC → 接続ポート
ARPテーブル
IPv4 → MAC
経路表
宛先IPネットワーク → 経路

ネットワークの学習では「MACアドレステーブル」「ARPテーブル」「ルーティングテーブル」が登場します。

どれも情報を記録する表ですが、何を記録しているかが異なります。

3種類のテーブルの違い
テーブル 保存する情報 主な用途
MACアドレステーブル VLAN・MACアドレス・ポート L2フレームをどのポートへ送るか
ARPテーブル IPv4アドレス・MACアドレス IPから同一リンク上のMACを知る
ルーティングテーブル 宛先ネットワーク・経路 IPパケットをどちらへ送るか

 

例えばPC-Aが異なるVLANのPC-Bへ通信するなら、まずPC-Aは宛先IPを見てゲートウェイを使うと判断します。

ARPテーブルでゲートウェイのMACアドレスを調べ、Ethernetフレームを送信します。

L2スイッチはMACアドレステーブルを使って、そのフレームをゲートウェイ側に届けます。

L3スイッチは受信したIPパケットに対してルーティングテーブルを参照し、VLAN20側へ送ると判断します。

更に必要ならARPでPC-BのMACアドレスを調べます。

このように3つのテーブルが連携しています。

MACアドレステーブルは「どのポートか」、ARPテーブルは「このIPのMACは何か」、ルーティングテーブルは「どのIP経路か」
を扱うと覚えましょう。

VLAN間で通信出来ない時の確認ポイント

図解|VLAN間通信ができないときの確認順

1

端末側

IPアドレス・マスク・ゲートウェイを確認

2

L2側

ポートのVLAN設定・トランク・MAC学習を確認

3

L3側

SVI・IPルーティング・経路表・ARPを確認

4

通信制限

ACL・ファイアウォール・ICMP許可状態を確認

「同じVLANでは通信出来るのに、別VLANへ通信出来ない」時は、設定を無闇に変更する前に段階的に確認しましょう。

最初に見るべきは、IPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイです。

例えばPC-Aが「192.168.10.10/24」で、ゲートウェイを「192.168.10.1」にするべきところを別のアドレスに設定していると、異なるネットワークへ通信出来ません。

また、VLAN10に所属させたいポートが誤ってVLAN20になっている場合も問題になります。

次に、トランクポートで必要なVLANが許可されているか、SVIが動作しているか、IPルーティングが有効か、ルーティングテーブルに経路があるかを確認します。

ACLやファイアウォールで通信が遮断されている場合もあります。

Cisco系の一部機種では、次のコマンドが参考になります(利用できるコマンドは機種・OSで異なります)。

show vlan brief
show interfaces trunk
show mac address-table
show ip interface brief
show ip route
show ip arp

show vlan brief
はVLAN設定、show interfaces trunk
はトランク状態、show mac address-table
はMACアドレスの学習状況を確認するのに役立ちます。show ip route
はIP経路を確認するためのコマンドです。

調査の順番は、まず同じVLAN内の通信、次に自分のデフォルトゲートウェイへの通信、その後に相手VLANのゲートウェイや相手PCへの通信を確認すると整理し易くなります。

なお、pingはICMPが制限されている場合に失敗する事があるため、他の情報とも合わせて判断しましょう。

「L2の転送は成立しているか」「L3の経路は正しいか」「ACLなどで制限されていないか」
という順番で確認すれば、原因を絞り込みやすくなります。

L2SWとL3SWの仕組みを理解して使い分けよう

L2スイッチは、主にMACアドレスとMACアドレステーブルを使って同じL2ネットワーク内のフレームを転送する機器です。

一方、L3スイッチはL2転送に加え、IPアドレスとルーティングテーブルを使って異なるIPネットワーク間の通信を中継出来ます。

  • L2SW:
    同じL2ネットワーク内でフレームを転送する。
  • L3SW:
    L2転送に加え、異なるIPネットワーク間をルーティング出来る。
  • MACアドレステーブル:
    MACアドレスとスイッチポートの対応を記録する。
  • ARP:
    IPv4アドレスとMACアドレスの対応を調べる。
  • VLAN:
    L2ネットワークを論理的に分割する。
  • VLAN間ルーティング:
    異なるVLANに属するIPネットワーク間の通信を中継する。

同じVLAN内の通信と、異なるVLAN間の通信を比べると、MACアドレスとIPアドレスがどの様に連携しているか理解し易くなります。

まずは「MACによるL2転送」と「IPによるL3ルーティング」の違いを押さえ、実際の設定やトラブル対応に役立てましょう。

 




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