「L2スイッチとL3スイッチって、何が違うの?」
「MACアドレスとIPアドレスの役割が分からない」
「VLANを分けると、どうして通信出来無くなるの?」
ネットワークを学び始めると、この様な疑問が出てきます。
この記事では、L2SWとL3SWの違いから、MACアドレステーブル、ARP、VLAN、ルーティングの仕組みまで、イメージ出来る様に具体例を交えて解説します。

MACアドレスで同じVLAN内の転送
IPアドレスで異なるネットワーク間を転送
L3SWも同じVLAN内ではL2スイッチングを行います。
L2スイッチとL3スイッチの違いとは?
L2SWとL3SWの違いを比較表で確認
L2スイッチとL3スイッチは、どちらもパソコンやサーバーをネットワークにつなぐために使われる機器です。
見た目が似ていても、通信を判断する時に使用する情報や対応出来る範囲が異なります。
L2スイッチは、主に同じL2ネットワーク内の通信を中継します。
例えば、学校のパソコン教室にある複数のPCをL2スイッチに接続すると、スイッチは宛先MACアドレスを見て適切なポートへデータを転送します。
一方、L3スイッチはL2スイッチとしての機能に加え、IPアドレスを使ったルーティングに対応します。
営業部で「192.168.10.0/24」、経理部で「192.168.20.0/24」を使っている場合、L3スイッチはこれらの異なるIPネットワーク間の通信を中継出来ます。
| 比較項目 | L2スイッチ | L3スイッチ |
|---|---|---|
| 主な処理 | L2フレーム転送 | L2フレーム転送とIPルーティング |
| 転送判断の主な情報 | MACアドレス | MACアドレス・IPアドレス |
| MACアドレステーブル | 使う | 使う |
| ルーティングテーブル | 通常は転送に使わない | 使う |
| VLAN対応 | 対応製品で可能 | 対応製品で可能 |
| VLAN間ルーティング | 基本的に不可 | 対応 |
| 主な用途 | 端末の接続 | 異なるネットワークの集約・接続 |
まずは「L2は同じL2ネットワーク内の転送、L3は異なるIPネットワーク間のルーティングも可能」と覚えましょう。
ただし、実際の機能は製品や設定によって異なります。
また、L3スイッチでも同じVLAN内の通信では通常のL2転送が行われます。
OSI参照モデルのL2とL3を理解する
| L4 | トランスポート層(TCP・UDP) |
|---|---|
| L3 | ネットワーク層:IPアドレスとルーティング |
| L2 | データリンク層:MACアドレスとスイッチング |
| L1 | 物理層:電気・光信号 |
OSI参照モデル7層のうち通信の違いに関係が深い部分を抜粋。
「L2」「L3」のLは「Layer(層)」の頭文字です。
ネットワークの働きを7つの階層に整理した「OSI参照モデル」の第2層(データリンク層)と第3層(ネットワーク層)に由来します。
| 層 | 名称 | 主な内容 |
|---|---|---|
| L7 | アプリケーション層 | アプリケーションの通信 |
| L6 | プレゼンテーション層 | データ形式の扱い |
| L5 | セッション層 | 通信のやり取りの管理 |
| L4 | トランスポート層 | 通信の端点・信頼性など |
| L3 | ネットワーク層 | IPアドレスと経路選択 |
| L2 | データリンク層 | 同じL2ネットワーク内のフレーム転送 |
| L1 | 物理層 | 信号やケーブル |
データリンク層で扱うEthernetフレームには送信元MACアドレスと宛先MACアドレスが含まれます。
L2スイッチは主にこの情報を使って、どのポートにフレームを送るかを決めます。
ネットワーク層ではIPアドレスが重要です。
例えば異なるフロアや拠点のネットワークへデータを送る時、L3スイッチやルーターは宛先IPアドレスとルーティングテーブルを使って転送先を決めます。
身近な例でいえば、MACアドレスは「次に届ける相手を同じエリア内で指定する情報」、IPアドレスは「目的のネットワークや端末を示す情報」です。
実際の通信では二つの仕組みが連携します。
L2とL3は対立するものではなく、役割分担して働く階層
なのです。
L2スイッチ(L2SW)の仕組み
MACアドレスを使ってデータを転送する仕組み
ポート1 / 送信元
MACテーブルを参照
ポート2 / 宛先
ポート3 / 宛先ではない
PC-Cへは転送しない
宛先MACアドレス未学習なら、同じVLANのほかの転送可能なポートにフラッディングします。
PC-A、PC-B、PC-Cが1台のL2スイッチに接続されているとします。
PC-AがPC-Bへデータを送る時、スイッチはEthernetフレームの宛先MACアドレスを確認します。
PC-A L2スイッチ PC-B
ポート1 ─────────→ [ MACを確認 ] ─────────→ ポート2
│
└────────────── PC-C(ポート3)
※宛先が学習済みなら、PC-Cには転送しない宛先のMACアドレスがポート2の先にあると分かれば、スイッチはそのポートへ転送します。
PC-Cに同じフレームを送る必要はありません。
この様に不要な転送を抑えられるのが、スイッチの大きな特徴です。
昔のリピーターハブは、基本的に受信した信号を他のポートへ繰り返し送っていました。
対してL2スイッチは、MACアドレスを調べて転送先を選択します。
ただし、宛先が不明な場合やブロードキャストの場合は、同じVLAN内の複数ポートへ送る
事があります。
注意したいのは、L2スイッチは通常、IPパケットの宛先IPアドレスから転送ポートを決める訳では無いという点です。
IPアドレスを使って通信している時も、同じEthernetネットワーク内のフレーム転送ではMACアドレスが重要になります。
MACアドレステーブルの学習と転送の流れ
1
送信元MACを学習
2
宛先MACを検索
3
既知なら該当ポートへ
4
未知ならフラッディング
「MACアドレステーブル」は、MACアドレスがどのスイッチポートの先にあるかを記録する一覧表
です。
スイッチはフレームを受信した時、その送信元MACアドレスを確認して学習します。
| VLAN | MACアドレス(例) | ポート |
|---|---|---|
| 10 | AA:AA:AA:AA:AA:01 | 1 |
| 10 | BB:BB:BB:BB:BB:02 | 2 |
| 10 | CC:CC:CC:CC:CC:03 | 3 |
例えばPC-Aからポート1にフレームが届けば、スイッチは送信元MACアドレス「AA:AA:AA:AA:AA:01」がポート1の先にある事を覚えます。
PC-Bが返信すれば、返信フレームの送信元MACアドレスから、PC-Bがポート2の先にある事を学習します。
つまり、学習する時に確認するのは基本的に送信元MACアドレス
であり、転送先を決める時に確認するのは宛先MACアドレス
です。
この区別を覚えておきましょう。
宛先がまだテーブルに登録されていない場合、スイッチは同じVLANに属する転送可能なポートへフレームを送ります。
これを「未知のユニキャストのフラッディング」といいます。
その後、相手から返信が届けば、次回から学習したポートへ転送出来ます。
また、動的に学習したMACアドレスの情報は通常、一定時間利用されないと削除されます。
この機能を「エージング」と呼びます。
端末の接続場所が変わった場合でも、古い情報を残し続けないための仕組みです。
なお、詳細な学習・エージング動作や設定コマンドはメーカーと機種によって異なります。
MACアドレスとIPアドレスの違い
MACアドレスとは?役割と特徴
MACアドレスは、主にネットワークインターフェースを識別するための番号です。
一般的なEthernetのMACアドレスは48ビットで、「00:1A:2B:3C:4D:5E」のように16進数で書きます。
製造時に割り当てられるMACアドレスも多い一方、ソフトウェアから変更出来る場合もあります。
スマートフォンやパソコンでは、Wi-Fiのプライバシー保護のため、接続先ごとにランダム化したMACアドレスが使われる事もあります。
そのため「MACアドレスは絶対に変わらない」という理解は正確ではありません。
PCに有線LANとWi-Fiの両方が付いている場合、それぞれが別のMACアドレスを持つのが一般的です。
「1台のPCに必ず1つ」という訳でもありません。
MACアドレスは、Ethernetフレームを同じL2ネットワーク内で届ける時に役立ちます。
ネットワークの境界にあるルーターを通過すると、通常、次のリンクに合わせてEthernetフレームのMACアドレスは変わります。
最終目的地まで同じ宛先MACアドレスを付け続ける訳ではありません。
このため、MACアドレスは「今いるネットワーク区間で、フレームをどこへ届けるか」という役割を中心に理解すると整理し易いでしょう。
IPアドレスとは?ARPとの関係も解説
192.168.10.10
ARP要求:10.20のMACは?
192.168.10.20
MACをARP表へ記録
BB:BB:…:02
自分のMACを知らせる
ARPはIPv4の仕組みです。異なるIPネットワーク宛てなら、通常はゲートウェイのMACを調べます。
IPアドレスはIPネットワーク上で通信先を識別するための情報です。
IPv4なら「192.168.1.10」、IPv6なら「2001:db8::10」といった形式があります。
IPアドレスは、ネットワークをまたぐ通信で宛先を判断するために利用されます。
例えばPC-Aが「192.168.1.10/24」、PC-Bが「192.168.1.20/24」なら、通常は同じIPネットワークに属します。
PC-AからPC-BへEthernetで通信する際には、PC-BのMACアドレスが必要です。
この時IPv4で利用するのがARP(Address Resolution Protocol)
です。
PC-AがPC-BのMACアドレスを知らなければ、同じリンク上でARPリクエストを送ります。
PC-Bが返信すると、PC-AはIPアドレスとMACアドレスの対応を知る事が出来ます。
一方、PC-Aが「192.168.2.20」の様な異なるネットワークの端末へ通信する時は、通常、デフォルトゲートウェイへパケットを送ります。
この場合にARPで調べるのは、最終的な宛先PCのMACアドレスではなく、同じリンク上にあるゲートウェイのMACアドレスです。
IPアドレスはIPパケットの宛先を示し、MACアドレスはEthernet区間で次にフレームを届ける相手を示す
、と考えると分かり易いでしょう。
なお、IPv6ではIPv4のARPではなく、Neighbor Discoveryなどの仕組みが使われます。
VLANとは?ネットワークを分割する仕組み
VLANの基本とメリット
営業部 / 192.168.10.0/24
経理部 / 192.168.20.0/24
総務部 / 192.168.30.0/24
それぞれ別のブロードキャストドメイン。L2転送だけでは異なるVLANへ届きません。
VLANは「Virtual LAN」の略で、1台または複数台のスイッチを使い、L2ネットワークを論理的に分割する技術です。
物理的には同じスイッチにつながっていても、別のVLANに所属させれば、基本的に異なるL2ネットワークとして扱われます。
VLAN対応L2スイッチ
┌────┼────┐
│ │ │
VLAN10 VLAN20 VLAN30
営業部 経理部 総務部
(ブロードキャストの範囲を分離)例えば営業部のPCをVLAN10、経理部をVLAN20、総務部をVLAN30に割り当てます。
営業部のPCがブロードキャストを送った場合、その通信は通常、VLAN10の中に留まります。
経理部や総務部のVLANにそのまま広がる訳ではありません。
VLANを利用すると、部署や利用目的ごとに通信を整理出来ます。
例えば社員用、来客用、IP電話用、監視カメラ用などに分ければ、運用し易いネットワークを作れます。
一般的には、VLANごとに異なるIPサブネットを割り当てます。
ただし、VLANはそれ自体で完全なセキュリティ対策になる訳ではありません。
L3スイッチでVLAN間ルーティングを設定すれば異なるVLAN間で通信出来るため、アクセスを制限するにはACLやファイアウォールなども必要です。
また、VLANを作っただけでIPアドレスが自動的に割り当てられる訳ではありません。
アクセスポートとトランクポートの違い
VLAN10の端末
アクセス:VLAN10
トランク:VLAN10・20
通常は端末へ接続。原則1 VLAN
複数VLANを802.1Qタグで運ぶ
トランクをつないでもVLAN間ルーティングが自動で有効になるわけではありません。ネイティブVLANなどの例外があります。
VLAN対応スイッチのポートには、一般的に「アクセスポート」と「トランクポート」という使い分けがあります。
アクセスポートは、通常1つのVLANに所属する端末を接続するためのポートです。
例えば営業部のPCをつなぐポートをVLAN10に設定すると、そのPCの通信は基本的にVLAN10として扱われます。
端末側がVLANタグを意識しなくても利用出来る構成が一般的です。
トランクポートは、複数のVLANの通信を1本のリンクで運ぶために利用します。
例えば1階と2階のスイッチを接続し、どちらのフロアでもVLAN10とVLAN20を利用する時に便利です。
一般的な方式であるIEEE 802.1Qでは、EthernetフレームにVLANを識別するタグを付けます。
受信側のスイッチはタグを見て、フレームがどのVLANに属するかを判断します。
ただしネイティブVLANの様に、トランク上でタグ無しフレームを扱う場合もあります。
アクセスポートは主に1つのVLANの端末接続、トランクポートは複数VLANの運搬
と覚えましょう。
トランクはVLAN間ルーティングを実現する機能ではありません。
別VLANへの通信には、L3スイッチやルーターのルーティング機能が必要です。
L3スイッチ(L3SW)の仕組み
IPアドレスを使ったルーティングの仕組み
192.168.10.10
宛先IPを調べる / 経路表でVLAN20を選ぶ
192.168.20.20
次の区間の送信元・宛先MACを使用
原則、宛先IPはそのまま / TTLは減少
NATなど別の機能が働かない通常のIPv4ルーティングを想定しています。
L3スイッチは、L2転送に加えてIPパケットを別のIPネットワークへ転送する「ルーティング」が出来ます。
ルーティングでは、宛先IPアドレスとルーティングテーブルを確認し、転送先を決めます。
例えばVLAN10のネットワークが「192.168.10.0/24」、VLAN20が「192.168.20.0/24」とします。
L3スイッチのそれぞれのインターフェースに「192.168.10.1」「192.168.20.1」を設定すると、両方のネットワークがL3スイッチに直接接続された状態になります。
| 宛先ネットワーク | 転送先 |
|---|---|
| 192.168.10.0/24 | VLAN10側へ直接転送 |
| 192.168.20.0/24 | VLAN20側へ直接転送 |
| 0.0.0.0/0 | 上位ルーターへ(設定されている場合) |
宛先が「192.168.20.20」なら、L3スイッチはVLAN20側へ送ると判断します。
そして必要に応じてARPで次の宛先MACアドレスを調べ、Ethernetフレームを新しく作って転送します。
通常のIPv4ルーティングでは、送信元・宛先IPアドレスは変えず、次の区間に合わせてL2フレームのMACアドレスを付け替えます。
また、IPヘッダーのTTLが減ります。
NATなど別の処理を行う場合は、この説明とは異なる事があります。
L3スイッチには専用ハードウェアで高速転送する製品が多いものの、ルーターにも高速な製品があります。
「L3SWなら必ずルーターより速い」とは考えず、用途と仕様を確認する事が大切です。
VLAN間ルーティングとデフォルトゲートウェイ
PC-A:192.168.10.10
GW:192.168.10.1
VLAN10:192.168.10.1
VLAN20:192.168.20.1
PC-B:192.168.20.20
GW:192.168.20.1
SVIはVLANごとのL3インターフェース。機種によってはIPルーティング有効化などが必要です。
VLAN間ルーティングとは、異なるVLANの間をL3の機能で接続する事です。
例えばVLAN10とVLAN20にそれぞれ異なるIPネットワークを割り当てた時、L2転送だけでは両者を接続出来ません。
L3スイッチでは「SVI(Switch Virtual Interface)」というVLANに対応する論理インターフェースを使う構成が一般的です。
VLAN10のSVIに「192.168.10.1/24」、VLAN20のSVIに「192.168.20.1/24」を設定すると、これらを各VLANのデフォルトゲートウェイに出来ます。
PC-A / VLAN10 PC-B / VLAN20
192.168.10.10 192.168.20.20
GW:192.168.10.1 GW:192.168.20.1
│ │
└──────── L3スイッチ ──────────────┘
SVI10 SVI20
192.168.10.1 192.168.20.1PC-AがPC-Bへ通信する時、PC-Aは宛先が別ネットワークにあると判断し、自分のデフォルトゲートウェイへフレームを送ります。
L3スイッチはIPパケットの宛先を確認してVLAN20側へ転送します。
実際には、VLANの作成、ポートへの割り当て、SVIの動作状態、IPルーティング機能の有効化、ACLなどが正しく設定されている必要があります。
どの操作が必要かは機種によって異なるため、メーカーの設定ガイドも確認しましょう。
L2SWとL3SWの通信を具体例で比較
同じVLAN内で通信する場合
1
宛先IPを確認
2
ARPでPC-BのMACを確認
3
PC-Aがフレームを送信
4
L2SWが転送
5
PC-Bが受信
同じVLAN10に、PC-A「192.168.10.10/24」とPC-B「192.168.10.20/24」があるとします。
PC-AがPC-Bにデータを送りたい場合、PC-Aはまず宛先が同じIPネットワークにあると判断します。
PC-AのARPテーブルにPC-BのMACアドレスが無ければ、ARPリクエストをブロードキャストします。
PC-BがARPリプライで自分のMACアドレスを知らせると、PC-Aはその情報を使ってEthernetフレームを作ります。
フレームを受け取ったL2スイッチは、送信元MACアドレスを学習します。
そして宛先MACアドレスがテーブルにあれば、対応するポートへ転送します。
宛先が未学習なら、同じVLAN内でフラッディングする場合があります。
ここで重要なのは、PC-AとPC-Bは同じIPネットワークなので、通常はL3ルーティングを必要としない
ことです。
途中のスイッチがL3スイッチだったとしても、同じVLAN内の通信は通常L2転送で処理されます。
同一VLAN内では、ARPで相手のMACアドレスを知り、MACアドレステーブルでそのポートを探してフレームを届ける、という一連の動作が基本になります。
異なるVLAN間で通信する場合
区間1|PC-A → L3SW(VLAN10)
↓ L3SWでルーティング・L2フレーム再作成 ↓
区間2|L3SW → PC-B(VLAN20)
通常のIPv4ルーティングの例。IPヘッダーのTTLなど一部の情報は更新されます。
次にPC-AがVLAN10「192.168.10.10/24」、PC-BがVLAN20「192.168.20.20/24」にいる場合を考えます。
PC-Aのデフォルトゲートウェイを「192.168.10.1」、PC-Bのデフォルトゲートウェイを「192.168.20.1」とします。
- PC-Aは宛先IPアドレスを見て、自分とは別のIPネットワークにあると判断します。
- PC-AはARPなどでデフォルトゲートウェイのMACアドレスを調べ、そのMACアドレス宛てにEthernetフレームを送ります。
- 途中のL2スイッチはMACアドレステーブルを使って、L3スイッチ側へフレームを届けます。
- L3スイッチはIPパケットの宛先「192.168.20.20」を確認し、ルーティングテーブルからVLAN20側へ転送すると判断します。
- L3スイッチは必要に応じてPC-BのMACアドレスをARPで調べ、VLAN20側へ新しいEthernetフレームを送ります。
- PC-Bが受信し、返信時も必要に応じてゲートウェイを経由します。
ポイントは、PC-AからL3スイッチへ送るフレームの宛先MACアドレスは「ゲートウェイのMACアドレス」であり、IPパケットの宛先は最初から「PC-BのIPアドレス」である事です。
L3スイッチがVLAN20側へ転送すると、フレームのMACアドレスはそのリンクに合わせて付け替えられます。
同じVLANではMACアドレスによるL2転送が中心、異なるVLANではIPによるL3ルーティングが必要
という違いがここに表れます。
L2SW・L3SW・ルーターの違いと選び方
L3スイッチとルーターは何が違う?
L3スイッチとルーターは、どちらも異なるIPネットワークの間でパケットを転送出来ます。
両者の違いは「IPアドレスを扱えるかどうか」ではなく、一般的な用途や搭載機能、インターフェース構成などにあります。
L3スイッチは多数のLANポートとVLANを扱い、社内の複数ネットワークを集約する用途で良く使われます。
例えば営業部、経理部、開発部をそれぞれ異なるVLANに分け、それらの間の通信を制御する構成に向いています。
ルーターはLAN同士の接続だけでなく、WAN回線やインターネットへの接続でも良く使われます。
家庭用ルーターにはNAT、DHCPサーバー、ファイアウォール、Wi-Fiなどが一体化している製品もあります。
ただし、どの機能が搭載されているかは製品によります。
| 項目 | L2SW | L3SW | ルーター |
|---|---|---|---|
| L2フレーム転送 | 得意 | 得意 | 機種・構成による |
| IPルーティング | 基本的に不可 | 可能 | 可能 |
| VLAN間通信 | 単独では不可 | 得意 | 対応製品で可能 |
| インターネット接続 | 別のL3機器が必要 | 構成・機種による | よく使われる |
| NAT | 通常なし | 機種による | 対応製品が多い |
「L3スイッチなら必ずルーターより高速」とは限りません。
専用ハードウェアを搭載した高性能ルーターも存在します。
選ぶ時は、必要なVLAN数、ポート数、転送性能、WAN機能、VPNやNATの要否などを確認しましょう。
家庭・オフィス・企業での使い分け
外部ネットワーク
WAN接続・アクセス制御
社内のVLAN間ルーティング
PC・プリンター
PC・プリンター
PC・サーバー
下段のL2SW群は上段のL3SWへ接続する構成例です。
家庭では、Wi-Fiルーターがインターネットへの接続を担当し、有線LANポートが足りない場合にL2スイッチを追加する構成が一般的です。
全ての端末を同じネットワークに置くなら、L3スイッチは通常必要ありません。
小規模オフィスでは、L2スイッチとルーターの組み合わせで十分な場合があります。
ただし、社員用と来客用のネットワークを分ける、IP電話だけ別のVLANを使う、といった場合はVLAN対応のスイッチが便利です。
VLAN間通信が必要なら、対応するルーターやL3スイッチで中継します。
中規模以上の企業では、端末接続用のL2スイッチを各部署に配置し、集約部分にL3スイッチを置く構成が選ばれる事があります。
インターネット側にはルーターやファイアウォールを配置するなど、役割を分けて利用出来ます。
インターネット
│
ルーター / FW
│
L3スイッチ(VLAN間ルーティング)
├────────┬────────┐
L2スイッチ L2スイッチ L2スイッチ
│ │ │
営業部PC 経理部PC 開発部PC機器選定で重要なのは、「どの端末を同じネットワークに置くか」「どのネットワーク同士を接続するか」「通信をどこで制限するか」を先に決める事です。
必要な機能を明確にすれば、過剰な機器を買わずに済みます。
初心者が間違えやすいポイントとトラブル対策
MACアドレステーブル・ARP・経路表の違い
MAC → 接続ポート
IPv4 → MAC
宛先IPネットワーク → 経路
ネットワークの学習では「MACアドレステーブル」「ARPテーブル」「ルーティングテーブル」が登場します。
どれも情報を記録する表ですが、何を記録しているかが異なります。
| テーブル | 保存する情報 | 主な用途 |
|---|---|---|
| MACアドレステーブル | VLAN・MACアドレス・ポート | L2フレームをどのポートへ送るか |
| ARPテーブル | IPv4アドレス・MACアドレス | IPから同一リンク上のMACを知る |
| ルーティングテーブル | 宛先ネットワーク・経路 | IPパケットをどちらへ送るか |
例えばPC-Aが異なるVLANのPC-Bへ通信するなら、まずPC-Aは宛先IPを見てゲートウェイを使うと判断します。
ARPテーブルでゲートウェイのMACアドレスを調べ、Ethernetフレームを送信します。
L2スイッチはMACアドレステーブルを使って、そのフレームをゲートウェイ側に届けます。
L3スイッチは受信したIPパケットに対してルーティングテーブルを参照し、VLAN20側へ送ると判断します。
更に必要ならARPでPC-BのMACアドレスを調べます。
このように3つのテーブルが連携しています。
MACアドレステーブルは「どのポートか」、ARPテーブルは「このIPのMACは何か」、ルーティングテーブルは「どのIP経路か」
を扱うと覚えましょう。
VLAN間で通信出来ない時の確認ポイント
1
端末側
2
L2側
3
L3側
4
通信制限
「同じVLANでは通信出来るのに、別VLANへ通信出来ない」時は、設定を無闇に変更する前に段階的に確認しましょう。
最初に見るべきは、IPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイです。
例えばPC-Aが「192.168.10.10/24」で、ゲートウェイを「192.168.10.1」にするべきところを別のアドレスに設定していると、異なるネットワークへ通信出来ません。
また、VLAN10に所属させたいポートが誤ってVLAN20になっている場合も問題になります。
次に、トランクポートで必要なVLANが許可されているか、SVIが動作しているか、IPルーティングが有効か、ルーティングテーブルに経路があるかを確認します。
ACLやファイアウォールで通信が遮断されている場合もあります。
Cisco系の一部機種では、次のコマンドが参考になります(利用できるコマンドは機種・OSで異なります)。
show vlan brief
show interfaces trunk
show mac address-table
show ip interface brief
show ip route
show ip arp
show vlan brief
はVLAN設定、show interfaces trunk
はトランク状態、show mac address-table
はMACアドレスの学習状況を確認するのに役立ちます。show ip route
はIP経路を確認するためのコマンドです。
調査の順番は、まず同じVLAN内の通信、次に自分のデフォルトゲートウェイへの通信、その後に相手VLANのゲートウェイや相手PCへの通信を確認すると整理し易くなります。
なお、pingはICMPが制限されている場合に失敗する事があるため、他の情報とも合わせて判断しましょう。
「L2の転送は成立しているか」「L3の経路は正しいか」「ACLなどで制限されていないか」
という順番で確認すれば、原因を絞り込みやすくなります。
L2SWとL3SWの仕組みを理解して使い分けよう
L2スイッチは、主にMACアドレスとMACアドレステーブルを使って同じL2ネットワーク内のフレームを転送する機器です。
一方、L3スイッチはL2転送に加え、IPアドレスとルーティングテーブルを使って異なるIPネットワーク間の通信を中継出来ます。
- L2SW:
同じL2ネットワーク内でフレームを転送する。 - L3SW:
L2転送に加え、異なるIPネットワーク間をルーティング出来る。 - MACアドレステーブル:
MACアドレスとスイッチポートの対応を記録する。 - ARP:
IPv4アドレスとMACアドレスの対応を調べる。 - VLAN:
L2ネットワークを論理的に分割する。 - VLAN間ルーティング:
異なるVLANに属するIPネットワーク間の通信を中継する。
同じVLAN内の通信と、異なるVLAN間の通信を比べると、MACアドレスとIPアドレスがどの様に連携しているか理解し易くなります。
まずは「MACによるL2転送」と「IPによるL3ルーティング」の違いを押さえ、実際の設定やトラブル対応に役立てましょう。
コメント