STP、RSTP、MSTP、PVST+……名前が似すぎていて、「結局どれが何で、何を選べばいいの?」となりがちです。
しかも現場では、ベンダー混在やVLAN数、障害時の収束速度まで絡むので、ネットの断片知識だけだと判断を誤ります。
この記事では**違いを“選べる形”**に落とし込み、あなたのネットワークに最適な答えへ最短で案内します。
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1-1 まず結論:違い早見表
1-1-1 STP/RSTP/MSTP/PVST+ 比較表と要点
最初に「名前が似ていて混乱する」問題を、いったん整理します。
スパニングツリー(STP系)は、ひと言で言うと **“LAN(社内ネットワーク)の輪っか(ループ)を止める仕組み”**です。
輪っかがあると、同じ通信がぐるぐる回って大混乱(放送が止まらない、通信が詰まる)になり易いからです。(Cisco Meraki Documentation)
違いは、大きく3つだけ覚えると楽です。
- 速さ(障害から戻る速さ)
- STP:古い方式で、戻るのが遅くなりがち
- RSTP:STPを速くしたもの
- “木(ループしない形)”を何本作るか
- STP / RSTP:基本は 1本(ネットワーク全体で1つの木になりやすい)
- MSTP:VLANをまとめて 数本の木
- PVST+:VLANごとに たくさんの木
- どこの会社の方式か(標準か、ベンダー独自か)
- STP / RSTP / MSTP:IEEEという標準のルール(みんなで使える)
- PVST+ / Rapid PVST+:主にCiscoの拡張(Cisco中心の現場でよく出る)(Cisco Press)
ざっくり早見表(超ざっくり):
- STP(802.1D):ループ防止の基本形。復旧が遅いことが多い。(Cisco Meraki Documentation)
- RSTP(802.1w):STPを速くしたもの。今の基本。(Cisco)
- MSTP(802.1s):VLANをグループにして、少ない本数の木で回す(大規模向け)。(Cisco)
- PVST+:VLANごとに木を作る(VLAN単位で経路を分けやすいが、増えると重い)。(Cisco Press)
- Rapid PVST+:VLANごとのRSTP版(速い)。(Cisco)
1-2 迷いが消える選び方(最短ルール)
1-2-1 規模・VLAN数・ベンダー混在で決める
「結局どれを選べばいいの?」は、次のルールで大体決まります。
ルールA:迷ったらRSTP
今新しく作る・更改するなら、まずRSTPをベースに考えるのが普通です。
STPは“昔の回線でもOK”な代わりに、戻りが遅い時代の前提で作られました。
今は速い復旧が求められるので、速い方式へ移る流れがあります。(Cisco Meraki Documentation)
ルールB:VLANが多いなら「PVST+」か「MSTP」
ここが一番悩むポイントです。
違いはこうです。
- PVST+(Rapid PVST+):VLANごとに別の木を作る
→ VLANごとに“違う道”を使わせやすい(負荷分散しやすい)
→ でもVLANが100なら木も100…と増えて、機械が忙しくなりがち
(Cisco Press) - MSTP:VLANをグループにまとめて、少ない木で回す
→ 例えば「VLAN 10〜50は木1」「VLAN 60〜120は木2」みたいに出来る
→ VLANが増えても“木の本数”を抑えられる
(Extreme Networks Documentation)
ルールC:ベンダーが混ざるならMSTPが安全寄り
Cisco中心ならPVST+系がやり易いですが、会社(ベンダー)が混ざると、独自方式のクセでつまずく事があります。
標準寄りでまとめたいならMSTPが選ばれ易いです。(Cisco)
2-1 STP(802.1D)とは
2-1-1 仕組みと“遅い”と言われる限界
STPは、ネットワークの中にある冗長(同じ場所へ行ける別ルート)を使いつつ、輪っか(ループ)だけは作らないための仕組みです。
やり方はシンプルで、沢山ある道のうち、いくつかの道を あえて通行止め(ブロック) にして、全体を“木”の形にします。(Cisco Meraki Documentation)
STPが遅いと言われる理由は、道を開けるまでに 待ち時間が入るからです。
STPはポート(差し口)が使えるかどうか判断するときに、段階を踏みます。代表的にはこういう状態があります。
- Blocking(止める):輪っかになりそうだから止める
- Listening(様子見):情報を聞いて、止めるべきか確認
- Learning(学習):どの機械がどこにいるか覚える(MAC学習)
- Forwarding(通す):通信を通す
この「Listening→Learning」の間が、待ち時間になって“もっさり”しやすいポイントです。(Cisco)
まとめるとSTPは、
「安全のために慎重=戻るのが遅い事がある」
という性格です。
小さくて単純なネットワークならまだしも、今の用途(Web会議・業務システム・Wi-Fiなど)だと、復旧が遅いのは困りやすいので、次のRSTPが登場しました。(Cisco Meraki Documentation)
3-1 RSTP(802.1w)とは
3-1-1 何が変わって速くなったのか
RSTPは「STPを速くしたやつ」です。
ポイントは、速く出来る場面を見つけて、待ち時間を減らす事。
RSTPが特に速く出来るのは、次の2つの時です。
- エッジポート(PCやサーバーが直接つながる口)
- ポイントツーポイント(スイッチ同士が1対1でつながる口)
RSTPは「ここは輪っかになりにくい」と判断出来る場所では、Forwardingにすばやく移れます。(Cisco)
例えば学校の廊下を想像して下さい。
- “教室(PC)につながるドア”は、そこから廊下がループになる事は普通ない
- “廊下と廊下をつなぐドア(スイッチ同士)”は、つなぎ方次第でループになり得る
RSTPはこの違いをうまく使って、早く安全確認を終わらせます。
ただし、RSTPも万能ではありません。
設定が雑だと、意図しないスイッチが中心(ルート)になって道が変になったり、急に経路が変わって混乱する事があります。
だからRSTPは、
- 「どのスイッチを中心にするか」
- 「どの口はエッジか」
をきちんと決めて運用するのが大事です。(Cisco)
4-1 MSTP(802.1s)とは
4-1-1 VLANを束ねて複数ツリーを作る発想
MSTPは、ひと言で言うと **「VLANが多い世界で、木を作り過ぎない工夫」**です。
まずVLANを超ざっくり説明します。
VLANは「同じスイッチや線を使いつつ、グループを分ける仕組み」です。
クラス分け(1組、2組)みたいな物です。
PVST+は「1組は別の木、2組も別の木…」と、クラス毎に木を作ります。
一方MSTPは「1組〜3組は木A、4組〜6組は木B」みたいに、まとめて木を作れるのが特徴です。(Extreme Networks Documentation)
MSTPでは、同じ“地域(リージョン)”にいるスイッチ同士が、
- リージョン名
- リビジョン番号
- VLANの割り当て表(VLANをどの木に入れるか)
を一致させて動きます。ここがズレると、境界(境目)が出来て管理がややこしくなります。(Arista Networks)
良い所は、大規模で強いこと。
VLANが増えまくっても“木の本数”を抑えられるので、機械が忙しすぎる問題を減らし易いです。(Extreme Networks Documentation)
注意点は、設計が少し必要な事。
PVST+より「最初に決める事」が増えます。
5-1 PVST+/Rapid PVST+とは
5-1-1 「VLANごと」の強みとスケール課題
PVST+は、ざっくり言うと **「VLANごとに別のスパニングツリー(木)を動かす」**方式です。
これはCiscoの拡張として有名で、VLANごとに802.1Dの木がある、と説明されています。(Cisco Press)
良い点は、VLANごとに“違う道”を使わせやすい事。
例:
- VLAN10(電話)は左の道が近い
- VLAN20(PC)は右の道が近い
みたいに、同じネットワークでも分けて使えます。これは混雑(渋滞)を減らすのに役立ちます。
Rapid PVST+は、さらに **「VLANごとのRSTP版」**です。
公式にも「IEEE 802.1w(RSTP)をVLANごとに実装した物」と書かれています。(Cisco)
なので、PVST+より速く戻れる場面が増えます。
ただし弱点は、VLANが増えると木も増える事。
VLANが10なら木も10でまだ良いですが、VLANが200だと木も200…。
スイッチが考える量が増えて、CPU負荷や管理が大変になりがちです(“スケール課題”と言われる部分)。
この問題を避けたくて、MSTPを選ぶケースがあります。(Extreme Networks Documentation)
6-1 互換性と落とし穴(境界が一番危ない)
6-1-1 PVST+クラウド×MSTクラウドの注意点
一番トラブルが起きやすいのが、**PVST+の世界とMSTPの世界をつなぐ“境界”**です。
ここは言い方を変えると、「考え方が違う国どうしの国境」です。
- PVST+:VLANごとに木が沢山
- MSTP:VLANをまとめた少数の木
この2つをつなぐとき、Ciscoのドキュメントでは **PVST+ Simulation(PVST+シミュレーション)**という仕組みで“うまく会話する”と説明されています。(Cisco)
さらに別の資料でも、MSTPだけでは足りない部分をPVST Simulationが補う、と整理されています。(Arista Networks)
ここで大事な注意点があります。
負荷分散(道をうまく分ける)を成立させたいなら、MST側の境界ポートは全部Forwardingになっている必要がある、とCiscoのガイドに書かれています。(Cisco)
もし境界のどこかがBlockingになると、「本当は分けたいのに分けられない」「思った道を通らない」が起き易くなります。
中学生向けに言うと、
“国境の門(境界ポート)が全部開いてないと、交通整理がうまくいかない”
という感じです。
結論:
- 混在させるなら、境界の設計を最初にやる
- 「とりあえずつなぐ」は危険
です。
7-1 設計例:小〜大規模の推奨構成
7-1-1 良くある3パターンとお勧め
ここは“選び方の最終回答”です。
良くある3パターンで、現実的なお勧めを書きます。
パターンA:小規模(拠点1つ、スイッチ少、VLAN少)
→ RSTPがお勧め。
理由:速くて、設定が比較的シンプル。RSTPはエッジや1対1リンクで速くForwardingに出来る、とCiscoの解説にあります。(Cisco)
パターンB:中規模(VLANはそこそこ、機器はCisco中心)
→ **Rapid PVST+**がお勧めになりやすい。
理由:VLANごとにRSTPで速く回せる(公式にそう説明されている)。(Cisco)
注意:VLANが増えすぎると重くなりやすいので、将来VLANが何個になるかも考える。
パターンC:大規模(VLAN多い、拠点多い、会社の機器が混ざる)
→ MSTPがお勧めになりやすい。
理由:VLANをまとめて木の数を増やしすぎない。リージョン名・番号・VLAN表を合わせる、という基本ルールも各社ドキュメントで強調されています。(Arista Networks)
注意:境界(他方式との接続)を丁寧に設計する。
7-2 運用・トラブルシュートの勘所
7-2-1 監視ポイント/ありがちな事故と潰し方
運用で見るポイントは、難しく見えて実は3つです。
(1) ルート(中心)が想定通りか
スパニングツリーは“中心(ルート)”がとても大事です。
中心が変わると道がガラッと変わります。
- PVST+系:VLANごとに中心があり得る
- MSTP:インスタンス(木)ごとに中心がある
「このスイッチが中心になるはず」と決めておくと、変な遠回りや渋滞を防ぎやすいです。(Cisco Press)
(2) 復旧が遅いときは“STPの待ち”を疑う
リンクが戻っているのに通信が戻らない時、STPのListening/Learningで待っている可能性があります。
Ciscoの資料でも、STPではListening/Learningなどの移行がある事が説明されています。(Cisco)
RSTPならエッジや1対1リンクでは速く動けるので、STPのままになっていないかも確認ポイントです。(Cisco)
(3) 混在(PVST+とMST)では“境界”が事故りやすい
境界で負荷分散を狙うなら、境界ポートが全部Forwardingである必要がある、と明記されています。(Cisco)
ここが満たせないと「想定と違う木」になり易いので、構成変更の後に境界の状態をチェックするのが効きます。
8-1 よくある質問
8-1-1 移行・収束時間・CPU負荷の疑問を解決
Q1:Rapid PVST+ってRSTPと同じ?
かなり近いです。公式に「Rapid PVST+はIEEE 802.1w(RSTP)をVLANごとに実装した物」と説明されています。(Cisco)
違いは「VLANごとに別々に動く(木が増える)」ところです。
Q2:MSTPは“必ず”おすすめ?
必ずではありません。MSTPは“大規模向けの設計”が必要です。リージョン名・番号・VLAN表を揃える、といったルールを守らないと境界が増えてややこしくなります。(Arista Networks)
だから、小規模ならRSTPの方が楽な事が多いです。
Q3:PVST+とMSTPをつないでも大丈夫?
つなぐこと自体は想定されています。CiscoはPVST+ Simulationで相互運用する仕組みを説明しています。(Cisco)
ただし“境界の条件”が大事で、負荷分散を成立させるための条件も明記されています。(Cisco)
Q4:今STP(802.1D)で動いてる。すぐ変えるべき?
「復旧の遅さが困っている」なら、RSTP系へ寄せる価値は高いです。STPは長い復旧時間が許されていた時代に作られ、今は速い解決が求められる、という説明があります。(Cisco Meraki Documentation)
ただし、現場では他の機器や設定の影響もあるので、いきなり全部変更ではなく、影響範囲を見ながら段階的が安全です。
まとめ
スパニングツリー(STP系)は、ひと言で言うと **「LANの“輪っか(ループ)”を防ぐ安全装置」です。
スイッチ同士を2本以上つないで“予備の道”を作るのは良い事ですが、つなぎ方によっては道が輪っかになって、同じ通信がぐるぐる回り続けてネットが止まりやすくなります。
そこでSTP系は、いくつかの道をあえて通行止め(ブロック)**にして、輪っかを消します。(Cisco Meraki Documentation)
1) まず結論:違いは「速さ」と「木の本数」
ここでいう「木(き)」は、輪っかがない道の形(安全な形)だと思ってください。
- STP(802.1D):一番古い基本形。安全のために“待ち時間”が多く、トラブルから戻るのが遅くなりやすい。(Cisco Meraki Documentation)
- RSTP(802.1w):STPを速くした物。待ち時間に頼らず「安全に通していいか」を相手と確認しながら素早く切り替えられるのがポイント。(Cisco)
- MSTP(802.1s):VLANが多い時用の考え方。「VLANをまとめて、少ない本数の木で回す」。リージョン(同じ設定のグループ)という単位で管理する。(Cisco)
- PVST+:主に Cisco 系で良く出る方式。「VLANごとに木を作る」ので、VLANごとにルート(中心)を変えて負荷分散がしやすい。(Cisco)
- Rapid PVST+:PVST+の“速い版”。公式に「RSTP(802.1w)をVLAN毎に動かす物」と説明されている。(Cisco)
2) 「どれを選ぶ?」は、この3つで決まる
① 速く戻りたい?(復旧スピード)
- 速く戻したいなら基本は RSTP(またはRapid PVST+)。(Cisco)
- STPは古くて、タイマー(待ち時間)に寄りやすいので、今新しく選ぶ理由は少なめです(特別な事情があるなら別)。(Cisco Meraki Documentation)
② VLANは多い?(木が増えすぎない?)
- VLANが少ないなら、RSTPで十分な事が多い。(Cisco Meraki Documentation)
- VLANが多くて「道を分けたい」なら PVST+系かMSTPが候補。
③ 機器メーカーは混ざる?(相性問題)
- 色んなメーカーが混ざるなら、標準の考え方(RSTP/MSTP)を中心に考えると安心し易いです。MSTPは標準(IEEE)側の仕組みとしてまとまっています。(Cisco)
(“標準”は IEEE が決めているルール、というイメージです。)
3) 一番気を付ける場所:「混在の境界(つなぎ目)」
現場で事故が起き易いのは、PVST+の世界とMSTPの世界をつなぐ場所です。
理由は単純で、片方は「VLAN毎に木」、もう片方は「VLANをまとめた木」なので、世界の見え方が違うからです。
だから混在させるなら、先にこう考えるのが安全です。
- どこが“つなぎ目(境界)”になる?
- 境界で、想定どおりの道になる?
- VLANの分け方(MSTPのまとめ方)は、将来増えても破綻しない?
Rapid PVST+が「RSTPをVLANごとに動かす」と公式に書かれているように、方式が違っても“基本の考え”はつながりますが、設計を曖昧にしたままつなぐのが一番危険です。(Cisco)
4) 迷った時の超シンプル診断(これだけ覚えてOK)
- 小規模(VLAN少・機器少) → RSTP
- Cisco中心で、VLAN毎に道を分けたい → Rapid PVST+(VLANごとのRSTP)(Cisco)
- 大規模(VLAN多)やマルチベンダー混在 → MSTP(VLANをまとめて木の本数を抑える)(Cisco)
この記事のまとめ
- STP系は「ループを止める安全装置」。
- 速さ重視ならRSTP(またはRapid PVST+)。RSTPは“待ち時間に頼らず確認して早く切り替える”のが強み。(Cisco)
- **VLANが多いなら、PVST+(自由度)かMSTP(整理して少ない木)**で考える。(Cisco)
- そして一番の地雷は 方式が違う機器をつなぐ境界。ここだけは「なんとなく」で作らない。
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